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名古屋高等裁判所 昭和24年(控)1040号 判決

被告人

中西美弘

主文

本件控訴を棄却する。

当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

弁護人高野貞三の控訴趣意第一点について。

原判決によれば原審は論旨挙示の証拠によつて、論旨摘録の事実を認定したこと及びその挙示の証拠中谷口貞治の司法警察員に対する供述調書及び飯島晃作成の上申書が刑事訴訟法第三百二十一條によつて相手方の同意を得なければ証拠とできないものであることは正に論旨の通りである。而して証拠とすることの同意の時期については法はこれを明示していないのであるが、同法第二百九十六條等の法意に考えて一応その証拠調を請求する前にこれを要するものとせねばならない。然しながら論旨のように右に関する違法が一旦生じた後はその瑕疵は絶対的に回復し得ないものとすることはできないのであつて同意を要するに拘らず同意なくして、その証拠が取調べられた場合と雖もその排除の決定によつてその証拠を採用した違法が是正される点からするも、その証拠調の請求の後は勿論その証拠調を施行した後でも同意を得れば、その瑕疵は遡及して治癒されるものと解さねばならない。然るところ原審第二回公判調書によれば原審検察官が被告人の同意なくして前示伝聞証拠の取調を請求した後に(論旨が右の証拠の取調を請求し、そのまま裁判所へ提出した後に同意を求めたとするのは誤解である)該証拠に対する被告人の同意があり、瑕疵は治癒されていることは明かであるから結局原審の手続には違法がなかつたことに帰着するものというべく論旨は右と異る独自の見解に立つものであつて採用し難い。

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